これはどうも」
やま「何しろお嬢様にお目に懸りますのは尽きせぬ御縁と申すもので」
由「ごまをするというので瓜揉を一つ頂戴」
 と由兵衞が頻《しき》りに喋って居ると、向うの四畳半の離れに二人連の客、一人は土岐《とき》様の藩中でございまして岡山五長太《おかやまごちょうだ》と云う士族さん、酒の上の悪い人、此の人は三十七八になり未《いま》だ道楽も止まぬと見える。今一人は三十六七で小粋な人でございますなれども、田舎の通り者、桑原|治兵衞《じへえ》と云う渋川の糸商人《いとあきんど》でございますが、折々此の地へ参って遊んでばかり居ります。頻りにポン/\手を敲きますが、余り返辞を致しません。人が出て来ませんのは、沢山奉公人も居りませんから出ないと、癇癪を起して国会の演説が始まった様にピシャ/\手を敲きます。
岡山「誰《たれ》も来ねえのか、これ/\」
男「へえ/\」
 と黄色い声で、
男「此方《こちら》様で」
 とチョコ/\と来た者は妙な男で、もと東京の向両国《むこうりょうごく》の軍※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]屋《しゃもや》の重吉《じゅうきち》と云う、体躯《なり》の小さい人でございます。身
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