「それは早く帰ればお邪魔になるから、たんと居ろと仰しゃるので」
岩「貴方はそうお思召《ぼしめ》すからいけません」
二十四
岩「貴方木暮武太夫へ菊五郎《きくごろう》が湯治に来て居ります、家内を連れて来て居ります、松助《まつすけ》も連れて居《お》るそうです」
女「私は俳優《やくしゃ》は嫌い」
岩「落語家《はなしか》も来て居ります」
女「落語家は饒舌《おしゃべり》で嫌い」
岩「それでは貴方琴をお調べなさいな、どうせ借物《かりもの》で悪うございますが、何か一つお浚《さら》い遊ばせ」
女「私は厭だよ……芝居と云えば何《なん》じゃアないか、前橋へ東京の芝居が来て居るって」
岩「左様《さよう》で、慥《たし》か左團次《さだんじ》が来たそうで」
女「左團次と云えば、お隣の旦那様は左團次に能く似て居らっしゃるねえ」
岩「左様《そう》でございますよ、好男子《いいおとこ》で人柄で、そうしてお隣のお方ぐらい本当に御親切なお方はございません………そしてアノ若い気の利いた車を引く人、あんな身分に似合わぬ親切な人は有りません、まア一生懸命に汗を掻いて貴方のお癪を押してねえ、それにもう一人の方《かた
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