処が着いて居《い》るのは妙で」
幸「止しねえ」
由「大変に旦那に惚れて居ますぜ、初め私が話をして、彼《あ》れは東京の方だが、お家《うち》は川口町てえんで」
幸「下らねえことを云うな」
由「なにたゞ川口町と云ったので番地は云いません」
幸「番地など云ってはいかん」
由「どうも本当に品と云い人柄と云い、あんな方はないとお附の女中に云いましたら、本当に左様《そう》ですねと云って、お附の女中が横眼で見たが、これはどうも只ならんと思います」
幸「止しねえ、詰らんことを云って、聞えるぜ……峰公、止しな、覗いては悪い」
峰「覗きやアしません」
と次の間で火鉢 火を[#「火鉢 火を」はママ]起して居た車夫の峰松は、火鉢へ火を取って湯を沸しながら耳を寄せると、此方《こちら》は癪も治まったと見えて。
岩「どんなにか恟《びっく》りいたしましたろう」
女「私は久しく起らなかったが、今日は強く起って………お湯に動ずると云うが動じたのだろうか」
岩「貴方のようにくよ/\して、斯う云う処へ入らっしゃっても頓とお宅のことをお忘れ遊ばさんからいけません、斯う云う処へ入らしったら悉皆《すっかり》お宅の事はお忘れ遊ばせ」
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