たから、若旦那さまに幾ら辛くされようとも、旧《もと》の身分を考えれば何も云う処はございません、それは男の楽しみゆえ一人や二人|情婦《おんな》の有るは当前《あたりまえ》」
 と諦めて居るを宜《い》い事にして、茂之助は些《ちっ》とも家《うち》へ帰って来ません。終《しまい》には増長して家の金を持出して遊びに出て、小瀧に入上《いれあげ》て仕舞いますので、追々借財が出来ましたが、親父は八ヶましいから女房のおくのが内々で亭主の借金の尻を償《つぐの》って置きます。此のおくのは、年齢《とし》二十七だが感心なもので、亭主の借金をぽつ/\内証で返す積りで働きまするのだが、夜業《よなべ》を掛けても、一反半織るのは、余程上手なものでなければ出来ませんのを、おくのは一生懸命に夜業を掛けて、毎日二反ずつ織上げませんと、亭主の拵えた借金が払えないと精出して遣《や》って居ります。然《そ》ういう結構な女房を持って居ながら、茂之助は心得違いにも、とうとう多分の金を以《もっ》て彼《か》の小瀧を身請いたしました、尤《もっと》も其の頃の事ゆえ、身請と云っても旅の芸妓《げいしゃ》は廉《やす》かったもので、こま/\した借金を残らず
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