《すっかり》出来た処で此品《これ》を持ち、高崎《たかさき》や前橋《まえばし》の六|斎市《さいいち》の立ちまする処へ往って売るのでございますが、前橋は県庁がたちまして、大分《だいぶ》繁昌でございまして、只今は猶《なお》盛んで有りますが、料理茶屋の宜《よ》いのも有る。其の中で藤本《ふじもと》と云う鰻屋で料理を致す家《うち》が有ります。六斎が引けますると、茂之助は何日《いつ》も其家《そこ》へ往って泊りますが、一体贅沢者で、田舎の肴は喰えないなどと云う事を平生《ふだん》申して居ります。処が此の藤本は料理が一番宜いと云うので、六斎市の前の晩から、翌日《あした》の市の時も泊り、漸々《だん/″\》馴染《なじみ》となり、友達が来て共に泊ると云うような事に成りました。すると此の藤本の抱えで、小瀧《こたき》と云う芸者は、もと東京浅草|猿若町《さるわかまち》に居りまして、大層お客を取りました芸者で、まだ年は二十一でございますが、悪智《あくち》のあるもので、情夫《いろおとこ》ゆえに借金が出来て、仕方なしに前橋へ住替えて来ましたが、当人は何時までも田舎に居るのは厭で、早く東京へ帰りたいと思うとお金が欲しくなって
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