《ぎょうどうざん》の方《かた》へ参ります道に江川《えがわ》村と云う所が有ります。此処に奧木佐十郎《おくのぎさじゅうろう》と云って年齢《とし》六十に成る極く堅人《かたじん》がございます。旧《もと》は戸田《とだ》様の御家来で三十石も頂戴したもので、明治の時勢に相成りましたから、何か商売を為《し》なければならんと云うと、機場のこと故、少しは慣れて居りますから、忰《せがれ》の茂之助《ものすけ》を相手に織娘《おりこ》を抱えて機屋をいたしますと、明治の始めあたりは、追々機が盛って参り大分《だいぶ》繁昌で親父《おとっさん》も何《ど》うか早く茂之助に善《よ》い女房を持たせたいと思ううち、織娘の中で心掛けの善いおくのと云うが有りまして、親父《おやじ》の鑑識《めがね》でこれを茂之助に添わせると、宜《よ》いことには忽《たちま》ち子供が出産《でき》ました。総領を布卷吉《つまきち》と申して今年七歳になり、次は二月生れで女の児《こ》をお定《さだ》と申します。
二
扨《さて》、奧木茂之助は、只機が織り上るとちゃんと之を畳みまして綴糸《とじいと》を附ける。彼《あ》れもまた一役《ひとやく》で、悉皆
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