、
くの「おやまア貴方《あんた》は何うしておいでなせえました」
茂「あい誠に面目次第も有りません」
くの「お父さまが物堅くって家《うち》へ寄せ附けないと云っても、おくのが附いて居ながら、事の済んだ暁には何とか詫言をして家へ出這入りの出来るように為《し》そうなものだ、それとも私がお父さんに悪く取做《とりな》しでもして居や為ないかと、貴方《あんた》が腹でもたてゝいやアしないかと、そればっかり心配して居やしたよ」
と云われて、流石《さすが》の茂之助もおくのの貞実に感動され、暫く泣き沈みました。
茂「アノー誠に何うも面目次第もない、もう此処が辛抱の仕処《しどころ》だから、私《わし》は一生懸命に稼いで親父に確《しか》とした辛抱の証《しょう》を見せて家《うち》へ帰る積りだが、もうあの女には懲々《こり/\》したから真面目になって夫婦仲善く可愛いゝ子の顔を見て暮そうと云う心になったよ、併《しか》し只辛抱するったって親父が中々得心しまいから、横浜へ往って、少し商売の取引の事が有るから往《い》く積りだ、これまで私は馬鹿を為《し》て拵えた借財をお前が内証《ないしょう》で払ってくれた借金の極りも附けなければ
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