」
茂「耐らないとは何んだ…」
たき「私はもう縁が切れて見れば赤の他人だよ、その他人へ失敬な事を云うと肯《き》かないよ」
茂「失敬も何も有るものか」
と腹立紛れに突然《いきなり》お瀧の髻《たぶさ》を取って引倒す。
たき「何をするんだえ、お前」
茂「何もねえもんだ、殺して仕舞うのだ」
と互いに揉み合って居たが、やがて茂之助はお瀧を組み伏せ、乗し掛って拳を振り揚げ、五つ六つ打《ぶ》って居る処へ村上松五郎が帰って参りました。
十二
村上松五郎は此の体《てい》を見るより飛掛り、茂之助の髻《たぶさ》を取って仰向けに引倒し、表附の駒下駄で額の辺を蹴ったからダラ/\と血が流れるを、
松「やい手前《てめえ》も愛想の尽きた女だから金まで附けて手を切ったんだろう、何をするんでえ、僕の妻に対して失敬な事をすると免《ゆる》さんぞ、僕の妻を捕まえて無闇に打擲《ちょうちゃく》する事が有るかえ」
茂「僕の妻も無《ね》えもんだ……やア己の頭を割りやアがったなア」
と口惜しいから松五郎に喰《かぶ》り附きに掛ると、松五郎は少しく柔術《やわら》の手を心得て居りますから、茂之助の胸倉を捕《とら》え
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