》の認めの無《ね》い松公を慕って居ても末始終お前の身の上が覚束無《おぼつかね》えよ、縁有って一度でも二度でも苦労をした間柄だから、少しの金で松公の手が切れる事なら、何うか金の才覚はするから旧通《もとどお》りに話が附くめえものでも無えから、帰る腹なら帰ってくれねえか」
たき「厭だよ、シト何うしたんだね、私は素《もと》よりお前さんに惚れて来たんじゃア無いよ、前橋のような知りもしない処へ芸者に往って、逢う人も/\馴染めないやぼな人ばかりで、厭で/\堪らない処で松さんに逢ったんだが[#「逢ったんだが」は底本では「逢ったんだか」]、彼《あ》の人は私が東京に居た時分からの馴染だが、お金が無くって気儘に成れないから困って居ると、お前さんが舌の長い事を云ってポン/\法螺をお吹きだから、宜《い》い金持の旦那様と思い違えて、請出されて来て見ると、宅《うち》ではお内儀さんが機を織って働いて居るような人だから、然んな人の傍に何時までくっ附いて居ても仕方が無いから、私も斯う云う訳に成ったんだから、何もお前さんに未練を残して帰りたいなんてえ了簡は無いよ、然んな未練な事を云うと気障《きざ》が見えて耐《たま》らないよ
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