しに此の猿田村へ世帯《しょたい》を持ち、二人仲好く暮して居られた義理かえ」
たき「然んな事を今云ったッて仕方が無いじゃアないか、然んなら何故|彼《あ》の時出さないようにおしなさらない、一旦得心ずくで離縁に成って仕舞えば仕方が無いじゃア有りませんか、もう書付まで取交して悉皆《すっかり》極りが付いて仕舞って、今の私の亭主は松五郎ですよ、成程それは旧《もと》お前さんのお世話に成った事も有りますけれども、今に成って然んなぐず/\した事を云うと、今度はしっぺえ返しに松五郎さんの方から理不尽に喧嘩でも仕掛けるといけないから、後生ですから早く帰って下さい、お前さんより松さんの方が余程《よっぽど》やきもちやきで困るんだよ、ちょいと他の男と差向いで話でもして居ると、直ぐ嫉妬《やきもち》を焦《や》いて、訝《おか》しい処置振りをするって怒るんだよ」
茂「誰だってそれは怒るのが夫婦の情だ、お互に情が有れば夫婦の情だが、お前の方では夫婦の情を尽す事が無《ね》えんだ、何う考えてもお前に出られちゃア己の顔が立たねえんだ、聞けば松公は賭《あそ》んでばかり居《い》る……賭んで居《お》る……そうだそうだが、行先《ゆきさき
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