て押して往《ゆ》きますと、彼《あ》の辺には所々《ところ/″\》に沼のような溜り水が有ります。これは水溜《みずため》で、旱魃《かんばつ》の時の用意でございます。茂之助は其の水溜の沼のような処へポンと仰向けに突き落され、もんどりを打って転がり落ち、ガブ/\やって居るを見て、二人とも嘲笑《あざわら》いながら帰って参り、
たき「私を厭という程五つ打《ぶ》ちやアがったよ」
松「打たれながら勘定をする奴もねえもんだ、今度来やアがると只ア置かねえ、本当に彼奴《あいつ》は狂人《きちげえ》だ、ピッタリ表を締めて置け」
 と云う。此方《こちら》は茂之助が泥ぼっけになって沼から這上りましたが、松五郎に踏んだり蹴たりされたので、身体も思うように利かず、
茂「あゝー残念だが何うする事も出来ねえか」
 と善《よ》い人だけに逆《のぼ》せ上り、ずぶ濡れたるまゝ栄町の宅へ帰り、何うやら斯うやら身体を洗い、着物を着替えたが、袂《たもと》から鰌《どじょう》が飛出したり、髷の間から田螺《たにし》が落《おっこ》ちたり致しました。
茂「もう只ア置かねえ、彼奴等《あいつら》を殺して己も其の場で腹を切って死ぬより他に為《し》ようは無
前へ 次へ
全281ページ中42ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング