ったら茂之助も家《うち》へ帰ろうかと思いまして、右の金子を川村に渡しました。是れでお瀧は茂之助へ面当《つらあて》ヶ|間《ま》しく、わざとつい一里と隔たぬ猿田村《やえんだむら》の取附《とりつ》きに山王《さんのう》さまの森が有ります、其の鎮守の正面《むこう》に空家が有りましたからこれを借り、葮簀張《よしずばり》の掛茶店《かけぢゃや》を出し、片傍《かたわき》へ草履草鞋を吊して商い、村上松五郎は八木《やぎ》八名田《やなだ》辺へ参っては天下御禁制の賭博《てなぐさみ》を致してぶら/\暮して居ります。茂之助は三八郎の計《はから》いで、手切金を出しお瀧を離縁しましたが、面当に近所へ世帯《しょたい》を持ったので口惜《くやし》くって、寝ても覚めても忘られず、残念に心得て居りました。

        十一

 丁度盆の事でございます。茂之助は少し用が有って町へ買物に出ますると、足利地方では立派な家《うち》のお内儀《かみ》さんが風呂敷包を脊負《しょ》って買物に往《ゆ》きます。日傘を指《さ》し包を十文字に脊負《せお》い、ガラ/\下駄を穿《は》いて豪家《ものもち》のお内儀さんでも買物に出まするくらいだから、お瀧
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