なし、交際酒《つきええざけ》を一盃飲んで居ただけで、何も証拠の無え事を間男|呼《よば》わりを為《し》やアがッて、何処が間男だえ」
たき「静かにしておくんなさい、三八《さんぱっ》さんにまで御苦労を掛けて済みませんが、申し茂之助さん、何う為たんだよ、お前さん能《よう》く気を落着けておくれよ、大金を出して私を身請えしたと云う処《とこ》を恩に掛けて居なさるけれども、丸で私をおさんどん同様にこき遣って居るじゃアないか、請出されて来て見ればお前には立派なお内儀《かみ》さんも有って子供まで出来て居るじゃアないか、だから実家《うち》へ這入る事も出来ないで斯んな裏家住居《うらやずまい》の所へ人を入れて、妾《てかけ》と云っても公然《おもてむき》届けた訳でもなし、碌なものも着せず、いまに時節が来ると本妻《つま》にすると私を騙《だま》かして置くじゃアないか、間男を為たと云われた義理かえ、何うにもお前さんから然《そ》んな事を云われる訳は有りませんよ、若《も》しおくのさんが松さんと一緒に寝てゞも居たら、それは斬るとも叩《は》るとも勝手にするが宜《い》いけれども、私は斬られちゃア詰らないから立派に出しておくんなさい
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