とり引証《いんしょう》をするのみならず、安眠たる事は有るまからんと存奉候《ぞんじたてまつりてそろ》、其処《そこ》の道理を推測《おしはか》って見ますと、尊公の腹立《ふくりゅう》致さるゝ処は至極何うも是は沈黙千万たるの理合《りあい》にあらずんば有るべからず」
 と何んだか云う事は些《ちっ》とも分りません、可笑《おかし》いのも上《のぼ》せて居りますから気が付かず茂之助は夢中で居ります。
茂「お前さんの云う事は何んだか薩張《さっぱ》り分りませんが、男女《なんにょ》とも此の儘何うも捨置く事は出来ません、御意見に背くようですが親父の前へ対しても打棄《うっちゃ》っちゃア置かれませんから、私は彼奴《あいつ》を斬らずにゃア置きません、何うぞお手をお引き下さいまし」
松「さア斬れ、二人並べて置いて斬れ……何《な》にイ当然《あたりめえ》よ、密通すれば何《ど》れだけと処分は極って居るんだ、仮令《たとえ》間男をしても亭主が無闇に斬るような世の中じゃア無《ね》えや、さア何処へでも勝手に持出せ、一年の間赤い筒袖《つゝっぽ》を着て苦役《くえき》をする事は素《もと》より承知の上だが、何も二人で枕を並べて寝てえた訳じゃア
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