あるべからず、怒然《どぜん》として心を静め給え」
茂「へえ有難う……ございますが、どうか放して下さい」
と云う。
九
茂「三八さん、誠にお恥かしい事でございますが、此のお瀧の畜生|奴《め》、間男を引摺込んで貴方私の事を悪口《あっこう》して居るのを私が聞くとも知らず、大それた枕を並べて寝に掛ったから助けちゃア置かれません、私だって素《もと》は御領主さまの家来で、聊《いさゝ》か御扶持《ごふち》も戴いた者ゆえ親父に聞えても私が顔が立ちません、名義が廃《すた》ります、ヘエ」
三「いや、御尤もの事だが、能く爰《こゝ》の道理を君|肯《き》かんと宜しく無いて、何《ど》のような事が有ろうとも僕が斯う遣って此処へ仲来《ちゅうらい》して、今君だちの困難を発明することは公然たる処を得たりと雖《いえど》も、お瀧どのが一体逃去ったる義で御座り奉つり候《そろ》、茂之助さんが大金を出《いだ》して身請に及び、斯《かゝ》る処の一軒の家まで求め、即ち何不足なく驚愕|安然《あんぜん》として居《い》られるのを有難く存じ奉る義と心得あるべからんに、密夫《みっぷ》を引入れてからに、何うも酒肴《さけさかな》を
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