て居る、一体|彼奴《あいつ》は心掛けが宜くない、軽薄を以て彼《あ》の方《ほう》へ取附こうと云う考えだろう、などと詰らない事を云って怒《おこ》ります。同じようなお膳が出まして鯛の浜焼が名々《めい/\》皿に附いて出ましても、隣席《となり》の人の鯛は少し大きいと腹を立て、此家《こゝ》の亭主は甚だ不注意|極《きわ》まる、鯛などは同じように揃ったのを出せば宜《い》いんだ、と云っても然《そ》う揃ったのは有りません。また隣で蔵でも立派に建てますと、何うだえ此の頃は忌《いや》にぎすついて来たが、成上りてえものは宜《い》けねえ者だ、旦那然とした面《つら》を為《し》やアがって、朝湯で逢っても厭に肩で風を切って、彼奴が蔵を建ったので丁度南から風の這入る処を、蔵の為に坐敷が暗くなっていけません、何|彼《あれ》だって好《い》い蔵じゃア有りません、毀《こわ》しか何か買って来たんでしょう、火事でも有りゃア直《じき》に火が這入ります、などゝ自分で建てる事が出来んとグッと込上げて参りますが、誰も此の嫉妬心《しっとしん》は離れる事は出来ませんものと見えます。況《まし》てや大金を出しまして連れて来たお瀧が、松五郎の膝へしな
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