何んなにか心配したよ」
松「宜《い》い塩梅《あんばい》に僕の手に這入ったが、家主《やだま》ア東京へ往ったじゃアねえか」
たき「宜いよ。私は本当に案じたよ、お前の来ようが遅いから待ちぼけは詰らないと思ってたが能く来たね、何ね少しお金の出来る事が有って東京へ往ったんだが、一体|才覚《はたらき》の無い人だから出来る気遣《きづかい》は無いよ、誰がおいそれと金を貸す奴があるものかね、屹度《きっと》出来やア為《し》ないが、二百両借りて来ると云ったから十日や十五日は帰るまいと思うよ、□□□□、□□□□□□□□□□□」
松「だって体裁《きまり》が悪くて成らねえんだ、親指《これ》が感附きゃア為《し》ねえか知ら」
たき「大丈夫だよ、彼《あ》んなでれすけだから気の附く気遣は有りゃア為ませんよ」
と云うひそ/\話を窓の下で聞いて居りました茂之助は腹を立て、
茂「己の事をでれすけ呼《よば》わりをしてえやアがる、罰当り奴《め》、前橋の藤本で手を合せて、私を請出して素人にしておくんなさる此の御恩は忘れないと云やアがった事を忘れたか」
とグーッと癇が高ぶって来ると、額に青筋を現わし、唇を慄《ふる》わし、踏込《ふん
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