》のお藤を助けまして、水を飲ませ脊《せな》を撫《さす》り、
市「何か薬でもあるか」
 と聞きましたが、お藤は更に物も云えません様子だから流れの水を飲ませ、脊中を撫り、種々《いろ/\》介抱致して居る中《うち》に漸く生気《しょうき》に成って、
藤「実はこれ/\の悪党の為に騙《だま》されて此様《こん》な難に遭いましたが、従者《とも》の下婢《おんな》岩と申すのは、何う致しましたか、何卒《どうぞ》お探《たず》ねなすって下さいまし」
市「ムヽーそれは飛んだ事だった、私《わし》が往って探して上げやんしょう」
 と素より侠気《おとこだて》の人ゆえ、御案内の通り恐ろしい谷間の急な坂を登って参り、庚申塚の[#「庚申塚の」は底本では「庚辛塚の」]在《あ》ります折田の根方へ来て見ますると、血が少し流れて居るのみで、供の女中岩と申すものゝ死骸が見えません。櫛や笄は折れて其処《そこ》に落散《おちち》って居ながら死骸が分りません。すると其処《こゝ》[#「其処《こゝ》」はママ]に野口權平《のぐちごんぺい》と云う百姓がございます、崖の方へ引付《ひッつ》いてある家《うち》で、六十九番地で、市四郎は予《かね》て知合《しりあ
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