して、忽《たちま》ちに前橋まで此の筏が下りて参りますが、中々容易なものでは有りません。只今|彼《あ》の市四郎が上拵えの手伝いを致して居りますると、
「きャー」
と云う女の声に恟《びっく》り致して、市四郎が仰向《あおむ》いて見ますと、崖の上からバラ/″\/″\と櫛《くし》笄《こうがい》が落ちて来ました。
市「おや……何か落ちて来た」
と身を屈《かゞ》めて透《すか》して見ますと、谷間《たにま》に繁茂致して居《お》る樹木にからんで居ます藤蔓は、井戸綱ぐらいもある太い奴が幾つも八重になって紮《から》んで居ます、其処へ陥《おち》いりましたはお藤と云う女の運が好《い》いので、藤蔓と藤蔓の間へ身が挟《はさ》まって逆さまに成りましたから、髪も乱れ、お藤は一生懸命に藤蔓へ掴《つか》まったなり気が遠くなりました。
女「あゝ……」
と云う声に恟りして市四郎が仰向いて見ますと、一人の女が藤蔓の間に挟まって下《さが》って居ましたから、
市「おゝ/\落ちたこと、あゝ危い」
と素《もと》より勝手を知って居りますから、忽ちに市四郎が岩角に捕《つか》まって這い上り、樹《き》の根へ足を蹈《ふ》ん掛《が》けて彼《か
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