三年|前《あと》に足利栄町に於きましてお瀧と密通して、茂之助夫婦が非業な死を遂げた村上松五郎と云う士族《さむらい》で、今姿を変えても斯様な悪業を働いて居ります。

        四十五

 さて車夫の峯松が、欺いて連れ出しましたお藤と云う彼《か》の婦人を、皀莢滝の谷間《たにあい》へ追込みましたので、お藤は勝手は知らず、足を蹈外《ふみはず》して真逆《まっさか》さまに落ちましたが、御案内の通り彼《あ》の折田の谷は余程深うございまして、下には所々《しょ/\》に巨岩《おおいわ》が有りまして、これへ山田川の流れが衝《あた》って渦を巻いて落します。水色|真青《まっさお》にして物凄い所であります。前面《むこう》には皀莢滝と申します大滝が有りまして、ドウードッと云うすさまじい水音でございます。其処へ落ちては五体粉微塵となるくらいの嶮岨《けんそ》な処でありますから、決して助かりよう筈はないのでございます。丁度其の晩山田川へ筏を組みに参って居りましたのは、市城村の市四郎と云う侠気《おとこぎ》の人で、御案内の通り筏乗と申すものは、上州でも多く五町田、市城村、村上|彼《あ》の辺に住《すま》いを致して居ります
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