》だが、旦那に対《むか》えば私《わし》だって言わぬと云ったら決して言いませんから、仰しゃい身の上を、旦那に縋《すが》れば何うにか成るかも知れません」
女「有難うございます、屋敷は旧麻布《もとあざぶ》の二本榎《にほんえのき》でございます」
由「麻布二本榎え、何処、六本木と云うのはあるが、六本木の方でありますか」
女「いえ二本榎で、瀧川左京《たきかわさきょう》と申す者の娘で」
幸「えゝ、アノお側を勤めた瀧川さん、千五百石も取った家《うち》のお嬢さん…」
由「えゝ、これは恐れ入った、失礼でございます千五百石も取った方の、私なぞは前《ぜん》からいまだに貧乏だから些《ちっ》とも変りませんが、只貧乏慣れている処が不思議で、少しも身代は開けないのだから、どうも恐れ入ったわけです」
幸「私《わたくし》は瀧川様へお出入をした事もありますが、真《まこと》に貴方は瀧川様のお嬢さんでございますか」
女「はい、決して神かけて嘘は申しません、どうぞ此の事は委《くわ》しくまだ大屋様へは申しませんから、どうか内聞になすって下さいまし、東京のお方で御親切に仰しゃって下さいまして、お懐かしいから迂濶《うっか》り申したので
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