母はアノ恟りいたしまして身体も大分|悪《あし》くなりましたが、此方《こっち》より手紙を出しましても向《むこう》から参ることも出来ませんで、此の頃は兄が諸方の借財方に責められまして、僅《わず》かばかりの夜の物諸道具も取られまして、此の頃は煩《わずら》って」
由「へえ、どうもあるねえ、一度ね、私《わし》は伊豆《いず》の網代《あじろ》へ行ったことがある、其処に売られて来た芸妓《げいしゃ》は、矢張叔父さんに欺《だま》されて娼妓《じょろう》にされまして来たと云うので、涙を落しての話で有ったが、それはお気の毒な事だねえ、左様でげすか、お屋敷は何方《どちら》でございます」
女「屋敷の名前なぞは親共の耻になりますから、それだけは御免遊ばして」
幸「ハヽ、それじゃアお聞き申しますまい」
由「旦那、そんな遠慮をしてはいけません」
幸「それでも耻になると仰しゃるから」

        四十二

由「貴方、旦那が御親切だから貴方の身の上を心配して、お名前をお聞きなさるので、貴方は親の耻になると云うは御尤《ごもっとも》だけれども、何もこれは決して言いませんよ、誰が聞いても……私《わたし》は随分お饒舌《しゃべり
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