幸「私もお屋敷へお出入をした者で、大概お屋敷は存じて居りますが、貴方の御様子は御家中でも無いようですが、御直参《ごじきさん》かね」
女「はい」
 と段々聞かれゝば聞かれるほど胸が迫ると見えて、彼《か》の女は下を向いて居りますと、膝へバラ/\涙を落します。
由「旦那……少しお泣きのようだから、こんなことは深く聞かれません、此処で貴方癪でも起されると旦那が押すような事が出来ます、峰松は今日《こんにち》は居りませんから、二人で間に合えば宜しいが……御心配と見える」
幸「どう云う心配で」
女「はい……兄が放蕩で、私は田舎の事はさっぱり存じませんから田舎へ連れて往って、良い処へ奉公をさせる、却《かえ》って田舎には豪農や豪商があるのだからと申しまして、私も東京に居りまして知る人に顔を見られるも、恥かしゅう存じますから、そんなら田舎の奉公をしようと申しまして、宇都宮《うつのみや》へ参りますと、私《わたくし》は兄に欺《だま》されまして置去になりました」
由「酷《ひど》い兄《あに》さんで……旦那酷いじゃアございませんか、お兄い様がどうも……原の中か何《ど》っかでしょう」
女「いえ何、イエもうアノ……こ
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