何だ奈良漬の香物《こうこ》か、これは妙だ、奈良漬の焼魚代《やきものがわ》りは不思議、ずーッと並べたのは好《い》いな」
幸「此処は大層《てえそう》香の物を貴《たっと》むてえから、奈良漬を出すのは東京の者へ対しての天狗なんだよ」
由「何だか御法事の気味がありますからね、奈良漬にお汁《つけ》の油揚《あぶらげ》は恐れ入った」
女「えゝ鈴木屋で」
由「また来た、何んだ」
女「えゝ枕を持って来やした、何卒《どうぞ》お買いなすって」
由「枕をどうする」
女「枕、貴方方《あなたがた》がなさる枕」
由「此の宿屋では枕がないのかえ、新しい枕を買うのかえ」
女「へえ」
由「幾らだね」
女「左様です、二ツで十四|銭《せね》に致しやす」
由「高いねえ、此の枕は一寸《ちょっと》縁日で買うと安いが、これは小枕が小さくッて、これじゃア出来やしねえが、何うしてもこれは買わなければならねえのかえ」
女「十四|銭《せね》は高《たか》かアござえやせん」
由「この小枕は高天原《たかまがはら》に紙が一枚は酷《ひど》いねえ、これは酷いが、まアいゝ、これを買っても宿屋で夜具を出すから枕も付きそうなものだ」
女「えゝ宿屋のは古うござい
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