それからはしごを三段ばかり下りて這入るのです、心配なし、気が詰らず、残らず東京の人なし、皆田舎の人ばかりで髷があります、男ばかり、女は子供を抱いて這入って居りますが、芝居の話などはございません、只畑の話で、お前さんの処《とこ》の胡摩は何時蒔きましたか、私《わし》の処《とこ》では茄子《なす》を何時作った、今年は出来が悪いとか菜漬《なづけ》がどうだとかいう話ばかりして居るので面白いわけで東京の人は居ないから話はない、隅の方へ往って湯のはねない処《ところ》へ這入って、小さくなって洗うのです」
幸「是は恐れ入ったねえ」
由「だが好《よ》い湯で、塩気があって透通《すきとお》るようで、極《ごく》綺麗です、玉子をゆでて居る奴があるので、手拭に包んで玉子を湯に浸《つ》けて置くと、心《しん》が温まるという、どういう訳かと皆《みんな》に聞くと、黄身《きみ》から先にゆだって白身が後《あと》からゆだるという、嘘だろうというと本当だと番頭も云ったが、白身はなんともない、きみが温まるので、上の方が温《あった》まらねえで、心がちゃんと臍《へそ》の下が温《あった》まるので、心臓肺臓などが温《あたゝ》まるので、こんな嬉
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