此の座敷《つぼ》へ世帯を…成程|疾《と》うから持ちたいと思ったが、今迄|店請《たなうけ》が無いから食客《いそうろう》でいたが、是から持ちますからお前店請になっておくんなせえ」
番「御冗談ばっかり、宜しゅうございます」
幸「何卒《どうぞ》お頼み申します、賄いの婆さんも頼みますよ、給金なぞはようがすか」
由「此様《こん》な処へ来て洒落なぞを云っても通じませんので、むだです」
幸「少し口を休めな」
由「只もう私は好い心持で……旦那湯へ一杯這入って」
幸「己は少し駕籠で腰が痛《いて》えからまア先へ這入んねえ」
由「左様ですか、此の温泉はどうしたッてそばからぶく/\出る湯ですから、私が先へ這入ったって汚れるというわけではなし、他《た》の者も這入るのですから」
 と喋りながら由兵衞は湯へ這入りに往《ゆ》きました。

        三十七

 岡村由兵衞は湯に這入って来まして
由「どうも宜いお湯で、どうもあり難い/\、だがねえ少し熱うございます、此処の湯は大変《ていへん》熱い様で、一|棟《むね》の中へ湯櫃《ゆびつ》が幾つもあるので、向うへまた下駄を穿《は》いて往《ゆ》くと、着物を入れる棚があって、
前へ 次へ
全281ページ中129ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング