来るから僕も酒を飲合って居るのさ」

        四

治「君は気い附かずに居るんだかね、君の留守へ彼《あ》の松五郎が来て、お瀧と差向いで飲んでゝ、僕の這入ろうと為《し》たのを、気い附かないようだったから、すーッと外して出たが、其の後《ご》両度ほど松五郎と差向いで酒を飲んで居た処を見たが、何も差向いで酒を飲んで居たから密通をして居ると云う訳でも無いが、実は色を売って居た芸者の事だから、何んとも云えないのさ、それに君も細君に苦労を掛けて、子まで有る身の上で、負債も嵩《かさ》んで居《い》られる事だから、日頃御懇意に致すに依って申すのだが、入らざる事を云うと君に愛想を尽《つか》されて立腹を受け、再び取引せんと云われゝば止むを得んが、全く君のお為を心得るから云いますので」
茂「有難う……然《そ》う云えば彼《あ》の松五郎は度々《たび/\》来ます」
治「度々来ましょう」
茂「私|彼奴《あいつ》たゞア置きませんヘエ……」
治「それは悪い……顔の色を変えて、たゞア置きませんなんて、刃物三昧をするのは時節が違いますよ、成程あんたは素《も》と戸田さまの御藩中だが、今は機屋だから機屋らしい事を為《し》な
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