いね、彼《あ》のお瀧なるものは……君の前でお瀧と云っては済みませんが、僕も彼《あれ》が芸者で居る時分二三度買った事も有るが、おくのさんのように、あゝ遣って留守を守って固くして、亭主の借金|済《な》しまでして、留守を守って居るようなら宜しいが、中々彼は守らんぜ、密夫《みっぷ》の有る事を君知りませんかえ」
茂「え……誰か/\」
治「誰かと云うて顔色を変えて……迂濶《うっか》りした事は云えない、確《しか》と是はと云う証《しょう》もなし、何も僕がその密夫と同衾《ひとつね》を為《し》ていた処を見定めた訳では無いけれども、何うも怪しいと云うのは、疾《と》うから馴染の情夫《おとこ》に相違ないようだ、君の前で云うのは何《な》んだが、本当に彼《あれ》が君を思って貞女を立て通す気かも知れないが、君の処へ松《まつ》五|郎《ろう》と云うものが遊びに来ましょう」
茂「なに彼《あれ》は東京の駿河台《するがだい》あたりの士族で、まだ若《わか》え男だが、お瀧が東京の猿若町で芸者を為《し》て居た時分に贔屓に成った人で、今|零落《おちぶ》れて此地《こっち》へ来て居ると云うので、福井町《ふくいまち》に居ると云って時々遊びに
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