お父《とっ》さんは義理が有るから、おくのさんに彼《あれ》は宅へ寄せ附けないと云う、又おくのさんは、舅の機嫌を取って、貴方《あんた》の借金の方を附けるてえ事を、僕は此間《こなえだ》聞いてゝ落涙をしましたが、本当に感心な心掛だと思《おめ》えました、貴方《あんた》も子は可愛いだろうね」
茂「ヘヽヽ子の可愛く無いものは有りません」
治「それはね君も惚れて、大金を出してからに身請までした女を、よせと云うのは僕が強気《ごうぎ》に失敬な事を云うと君思うかは知れんが、彼《あ》のお瀧を、君に持たして置くのをよさせ度《た》いね、廃《よ》し給え、君の為に成らんから」
茂「誰も然《そ》う云うが、何うも自分の好いた女と、一《ひ》ト処《とこ》で取膳《とりぜん》で飯でも喰わなけりゃア詰らんからね、何も熱く成ってると云う訳じゃア無いが、僕の方からおくのを好いて持った訳でも無い、親の意を背かずに厭な女だけれども仕方なしに持ったが、自分の好いた女を愛して居るのがマア男の楽しみだからね」
治「それは楽しみさ、何も僕が君の楽しみを止《とゞ》めるてえ訳では無いが、如何にも君の細君の心に成って見ると、僕は君の楽しみを止《と》めた
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