は人の身体を無闇に打つものではない、人の身体は大切のものじゃ、分らんか、この肉体というものは容易なものではない造物主より賜わる処の此の肉体は大切なものじゃ」
市「誰が呉れやした、虚言《うそ》ばかり吐《つ》いて、此の体は木彫《きぼり》じゃアねえし仏師屋《ぶっしや》が造ったなんてえ」
警「仏師屋じゃアない造物主、早く言えば神から下すった身体、無闇と殴《う》ち打擲して、殊に谷川へ投込むなどとは以ての外《ほか》であるぞ」
市「じゃア先方《むこう》の体ばっかり神様から貰って、己《おら》ア体は粗末《ぞんぜえ》にしても構わねえと云わっしゃるのか」
警「粗末《そまつ》にするという事があるか、先方《せんぽう》の身体も貴様の身体も同じじゃ、それじゃに依って喧嘩口論して、粗暴に人を打擲する事はならん」
市「何だか貴方《あんた》の云うことは明瞭《はっきり》分らねえ、だがねえ己《おら》ア身体は大事、先方《むこう》な身体も大事と一つにいうなら、何故己ア身体を先方な奴が打《ぶ》ったか、打たれては腹が立つ、先方で打って此方《こっち》で手出しが出来ねえといって、此方の坂を下りて亦登って貴方へ打ちやしたと届けて出て、それ
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