]「分らん奴であるぞ、罪と云うは今の事じゃ、二人を打落《ぶちおと》したのが罪じゃ」
市「己《おら》を先へ打《ぶ》つ奴の方が罪があると思いやんすが、どうだえ」
巡「分らん事を申すな、お前は布告を知らんなア」
市「へい知りません、私《わし》の方へ布告が廻った事もありやんすが、読めねえだ、手習《てなれえ》した事がねえから何だか分らねえから印形|捺《つ》いて段々廻すだ、時々聞きに来いなんど云うが、郡役所だって一里半もあるので、其処まで参るには商業《しょうべえ》を休まなければなんねえだから、聞きに往《い》く訳にはめえりませんよ」
巡「どうもはや分らぬ奴……参れ」
市「参《めえ》れませんよ」
巡「なぜ参らぬか」
市「なぜ参《めえ》らぬだって、貴方《あんた》私《わし》が悪くアねえのだに、先に打《ぶ》ちやした奴を先へ連れて往《ゆ》くがいゝのだ、私ばかり悪いからって連れて行くてえなア無理な話で」
巡「どう云う理由《わけ》で此の谷へ打込《ぶちこ》んだか、それを申せ」
市「はい打込んだってえ、私《わし》を打ったゞからよ」
巡「じゃが理由《わけ》なく貴様を打つという事もあるまい、貴様に悪い事があるから向うでも
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