申しますが、何《ど》うぞ幾久しく御交際を願います」
 長「冗談いっちゃアいけやせん、私《わっち》のような貧乏人が親類になろうもんなら、番ごと借りにばかり往って仕ようがねえ」
 主人「イエ/\何うか願います、それに又此の文七は親も兄弟もないもので、私《わたくし》どもへ奉公に参った翌年に親父がなくなりましたが、実に正道潔白《しょうとうけっぱく》な人間ですが、如何《いか》にも弱い方《ほう》で店でも出して遣りたいが、然《しか》るべき後見人が無ければ出して遣れんと思っておりましたが、貴方のようなお方が後見になって下されば私は直《すぐ》に暖簾《のれん》を分けて遣るつもりで、命の親という縁もございますから、親兄弟の無いものゆえ、此者《これ》を貴方の子にして遣って下さいまし、文七も願いな」
 文「何うか貴方、然《そ》うでもして下さいませんと、私《わたくし》は貴方に御恩返しの仕方がございません、不束《ふつつか》でございますが、私を貴方の子にして下されば、どんなにでも御恩返しに御孝行を尽します」
 長「ヘエ、どうも旦那ア妙ですナ、へんてこですな」
 主人「イエも何う致しまして、親子兄弟固めの献酬《さかずき
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