わり》いや一旦此の人に遣っちまったんだから取返すのは極りが悪いから、此の人に遣っちまおう、私は貧乏人で金が性《しょう》に合わねえんだ、授からねえんだろうから、此の人が店でも出す時の足《たし》にして下さえ、一旦此の人に授かった金だから、何うか遣っておくんねえ」
 主人「イエ/\どう致しまして、奪られたら戴きます、御気象は解りましたから、併し全く二重に金を私が戴く訳で」
 長「だがね、何うも……だからよ、貰って置くから宜《い》いじゃアねえか……誠にどうも旦那ア、極りが悪《わる》いけれど、私《わっち》も貧乏|世帯《じょてえ》を張ってやすから此の金はお貰《も》れえ申しやしょう」
 主人「それは誠に有難い事で、就《つ》きましては貴方のような御侠客のお方と御懇意に致していますれば、此方《こちら》の曲った心も直ろうかと存じますので、押附けた事を願って誠に恐入りますが、今日《こんにち》から親類になって下さるように、私《わたくし》は兄弟と云う者がない身の上でございますゆえ、今年からお供《そなえ》の取遣《とりや》りを致します、明日《みょうにち》あたり餅搗《もちつ》きを致しますから、直《すぐ》にお供をお届け
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