は名聞《みょうもん》、貴方は見ず知らずの者へ、おいそれと百両の金子を下すって、お助けなさるという其のお志というものは、実に尊い神様のようなお方だッて、昨夜《さくや》もね番頭と貴方のお噂を致しましたなれども、お名前が知れず、誠に心配致しておりましたが、ようやくの事で解りましたから、御返金に参りましたが、慥《たし》か此れは角海老さんとかで御拝借の財布だそうで、封金のまゝ持って参りましたから、そっくりお手許《てもと》へお返し申します。」
長「えゝ」
と手に取上げて考え、
長「金子が出たんですか」
主「ヘエ、金子は奪られは致しません、此者《これ》より先《さ》きに宅《うち》へ届いて居りましたから二重でございます」
長「ムヽ…じゃア此の人は奪られねえのかえ、冗談じゃアねえぜ、え、おう、己《おら》アお前《めえ》のお蔭で夜《よっ》ぴて嬶《かゝあ》に責められた……旦那ア間違《まちげえ》だって程があらア」
主人「此者も全く奪られたと思ったので、誠に何《ど》うも何《な》んともお礼の申し上げようはございませんが、金子は其の儘お受取りを願います」
長「だがね、これを私《わっち》が貰うのは極りが悪《
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