とで》に他《わき》へ預けたんじゃアねえ、チャンと証拠があるんだが、まア宜かったノ」
文「ヘエ、何うも、是は何うも、昨夜《ゆうべ》は暗くって碌にお顔も見えませんでしたが、お蔭様で助かりまして有難う存じます」
主人「其の折はまた此者《これ》が不調法な詰らん事を申し貴方に御苦労を掛けまして、何《なん》とも何《ど》うもお礼の申上げようがございません、まったくは此者が泥坊に奪られたのではございません、お屋敷へ忘れて参りましたので、此の者が宅へ帰らんうちに金子はお屋敷から届けて参りましたから、何うしたのかと案じて居りまする処へ此者が帰って参りまして、金子を出しましたから、不思議に思いまして、段々調べて見ますると、まったくは賊に奪られたと心得て、吾妻橋から身を投げようとする処へ、これ/\のお方が通ってお助けなすったという事ゆえ、取敢《とりあえ》ずお礼に出ましたが、何んとも何うも恐入りました、有難う存じます」
九
主人「私共《わたくしども》も随分|大火災《おおやけ》でもございますと、五十両百両と施《ほどこし》を出した事もありますが、一軒前一分か二朱にしきゃア当りませんで、それ
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