つ》けねえか……おい何処《どこ》へ往ってるんだ、燈火を点けやアな、おい何処……其処《そこ》にいるじゃアねえか」
 兼「あゝ此処《こゝ》にいるよ」
 長「真暗だから見えねえや、鼻ア撮《つま》まれるのも知れねえ暗《くれ》え処《とこ》にぶっ坐《つわ》ッてねえで、燈火でも点けねえ、縁起が悪《わり》いや、お燈明でも上げろ」
 兼「お燈明どこじゃアないよ、私は今帰ったばっかりだよ、深川の一の鳥居まで往って来たんだよ、何処まで往ったって知れやアしないんだよ、今朝|宅《うち》のお久が出たっきり帰らねえんだよ」
 長「エヽお久が、何処《どけ》え往ったんだ」
 兼「何処《どこ》へ往ったか解らないから方々探して歩いたが、見えねえんだよ、朝御飯を喰《た》べて出たが、それっきり居なくなってしまって、本当に心配だから方々探したが、いまだに帰《けえ》らねえから私はぼんやりして草臥《くたび》れけえって此処にいるんだアね」
 長「ナ…ナニ知れねえ、年頃の娘だ、え、おう、いくら温順《おとな》しいたってからに悪《わり》い奴にでもくっついて、え、おう、智慧え附けられて好《い》い気になって、其の男に誘われてプイと遠くへ往《い》
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