いまして、二人前《ふたりまえ》の仕事を致し、早くって手際が好くって、塵際《ちりぎわ》などもすっきりして、落雁肌《らくがんはだ》にむらのないように塗る左官は少ないもので、戸前口《とまえぐち》をこの人が塗れば、必ず火の這入《はい》るような事はないというので、何《ど》んな職人が蔵を拵《こしら》えましても、戸前口だけは長兵衞さんに頼むというほど腕は良いが、誠に怠惰《なまけ》ものでございます。昔は、賭博に負けると裸体《はだか》で歩いたもので、只今はお厳《やかま》しいから裸体どころか股引も脱《と》る事が出来ませんけれども、其の頃は素裸体《すっぱだか》で、赤合羽《あかがっぱ》などを着て、「昨夜《ゆうべ》はからどうもすっぱり剥《むか》れた」と自慢に為《し》ているとは馬鹿気た事でございます。今長兵衞は着物まで取られてしまい、仕方なく十一になる女の子の半纒《はんてん》を借りて着たが、余程短く、下帯の結び目が出ていますが、平気な顔をして日暮にぼんやり我家《わがや》へ帰って参り、
長「おう今|帰《けえ》ったよ、お兼《かね》……おい何《ど》うしたんだ、真暗《まっくら》に為《し》て置いて、燈火《あかり》でも点《
前へ
次へ
全38ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング