、お前が帰って仕舞った後《あと》を見ると碁盤の下に財布の中へ百両入ったなり有ったから、高橋|様《さん》がお驚きなすって、さぞ案じて居るだろうから早く知らせて遣れと仰しゃって、彼方《あちら》の御家来が二人で提灯《ちょうちん》を点《つ》けて先刻《さっき》金子は届けて下すったのに、虚言《うそ》を吐《つ》いて……革財布は彼方で入用《いりよう》とはなんだ、ちゃんと此処《こゝ》に百金届いていますよ……其の百両の金は何処《どっ》から持って来たんだ」
 文「ヘエ……それは大変」
 主「なに」
 文「それは何《ど》うも、大変な事で」
 主「何《な》んだ」
 文「ヘエ………それじゃア私ゃ奪《と》られなかったんだ」
 主「何んだ、お前はどうも訳の解らん事を云うからしょうがない、平助どん、此の金の出所《でどころ》を調べておくれ、イエサ、未だ二十二や三になるものに、百両という大金を自由にされるような事は有るまい、お前へ店を預けて置くのに、またこれがどう云う融通をして、何処《どこ》に金を預けて置くか知れねえから此の百両の出所《でどこ》を調べてくんな」
 平「ヘエ……おい、お前|私《わし》が迷惑するよ、冗談じゃアな
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