い、困るよ、疾《と》うに金は届いてる処《とこ》へ又百両持って来るてえのは訝《おか》しいじゃアないか」
文「ヘエ/\、誠に粗忽《そこつ》千万な事を致しました、何《な》んとも何《ど》うも申訳はございませんが、実は慥《たし》かに懐へ入れてお邸《やしき》を出た了簡でございまして、枕橋まで参ると怪しい奴が私《わたくし》に突き当りながら、グッと手を私の懐の中へ入れました時に奪《と》られたに違いないと思い、小僧の使じゃアなし、旦那様に申訳がない、百両の金子を奪られては済まんと存じまして、吾妻橋から身を投げようと致す所へ通り掛ったお職人|体《てい》の方が私《わたし》を抱き止めて、何ういう訳で死ぬかと尋ねましたから、これ/\と申すと、それは気の毒だ、此処《こゝ》に百両有る、これを汝《てめえ》に遣るから泥坊に奪られない積りで主人の処《とこ》へ往くが宜《い》い、併《しか》しそれは尋常《ただ》の金じゃない、たった一人の娘が身を売った身《み》の代金《しろきん》だけれども、これを汝に遣るからと仰しゃって、御親切なお方に戴いて参りましたのでございます」
主「イヤハヤ何《ど》うも呆れちまった、何うだろう、其のお方
前へ
次へ
全38ページ中27ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング