て橋の袂《たもと》まで追駆《おっか》けて参り、
男「もしお前さん、今のお方もし……アヽもう見えなくなっちまった……有難う存じます、此の御恩は死んでも忘れやア致しません、左様なお方とも存じませんで悪口《あっこう》を吐《つ》きまして済みません、誠に有難う存じます、必ず一度は此の御恩をお返し申します、有難う存じます」
と生返ったような心持になりましたから、取急いで白銀町三丁目の店へ帰って参りましたが、御主人は使いの帰りが遅いから心配でございます。
主人「平助《へいすけ》どん、未だ帰りませんか文七は」
平「へえ、まだ帰りません、使いに出すと永いのが彼《あれ》の癖で、お払い金などを取りにお遣りなさるのは宜しくない事で、誠に困りましたな」
主「帰ったら能く小言をいいましょう」
と心配して居る処へ表の戸をトン/\/\、
文「番頭さんトン/\/\……番頭さん文七でございます、只今帰りました」
平「旦那、文七が帰りました」
主「よく然《そ》ういってくんな」
平「今開けるよ……何《ど》う云うもんだなア、余《あんま》り遅いじゃアないか掛廻《かけまわ》りに往った時などは早く帰って来てくれな
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