あゝ何《な》んでも斯《か》んでも娘を女郎《じょうろ》にするのだ、仕方がねえ、其の代り己の娘が悪い病《やめえ》を引受けませんよう、朝晩凶事なく達者で年期の明くまで勤めますようにと、お前心に掛けて、ふだん信心する不動様でも、お祖師様でも、何様へでも一生懸命に信心して遣っておくれ」
 男「何う致しまして左様な金子は要りません」
 長「己だってさ遣りたくも無《ね》えけれどお前《めえ》が死ぬというから遣るてえのに、人の親切を無にするのけえ」
 と云いながら放り付けて往きました。
 男「やい何を為《し》やアがるんだ、斯《こ》んなものを打附《ぶっつ》けやアがって、畜生め、財布の中へ礫《いしころ》か何か入れて置いて、人の頭へ叩き附けて、ざまア見やアがれ、彼様《あん》な汚ない形《なり》を為《し》ていながら、百両なんてえ金を持ってる気遣《きづけ》えはねえ、彼様な奴が盗賊《どろぼう》だか何《な》んだか知れやアしない、此様《こん》な大きな石を入れて置きやアがって」
 と撫《なで》て見ると訝《おか》しな手障《てざわり》だから財布の中へ手を入れて引出して見ると、封金《ふうきん》で百両有りましたから恟《びっく》りし
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