長「お構いなくったって往けねえやな、仕方がねえ、じゃア己が此の金を遣ろう」
六
長「実は此処《こゝ》に百両持ってるが、これはお前《めえ》のを奪《と》ったんじゃアねえぜ、己は斯《こ》んな嬶《かゝあ》の着物を着て歩く位《くれえ》の貧乏|世帯《じょてえ》の者が百両なんてえ大金《てえきん》を持ってる気遣《きづけえ》はねえけれど、己に親孝行な娘が一人有っての、今年十七になるお久てえ者《もん》だが、今日吉原の角海老へ駆込《かっこ》んでって、親父が行立ちませんから何うか私の身体を買っておくんなさい、親父への意見にもなりましょうからって、娘が身を売って呉れた金が此処に在《あ》るんだが、其の身の代をそっくりお前に遣るんだ、己ん処《とこ》の娘は、泥水へ沈んだッて死ぬんじゃアねえが、お前は此処から飛び込んで本当に死ぬんだから、此れを遣っちまうんだ、其の代り己は仕事を為《し》て、段々借金を返《けえ》して往った処《とこ》が、三年かゝるか、五年掛るか知れねえが、悉皆《すっか》り借金を返《けえ》し切って又三年でも五年でも稼がなけりゃア、百両の金を持って、娘の身請を為《し》に往く事が出来ねえ、
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