真暗《まっくら》でございます。今長兵衞が橋の中央《なかば》まで来ると、上手《うわて》に向って欄干へ手を掛け、片足踏み掛けているは年頃二十二三の若い男で、腰に大きな矢立を差した、お店者《たなもの》風体《ふうてい》な男が飛び込もうとしていますから、慌《あわ》てゝ後《うしろ》から抱き止め、
長「おい、おい」
男「へゝへえ」
長「気味の悪い、何《な》んだ」
男「へえ…真平《まっぴら》御免なさいまし」
長「何んだお前《めえ》は、足を欄干へ踏掛《ふんが》けて何《ど》うするんだ」
男「へえ」
長「身投げじゃアねえか、え、おう」
男「なに宜《よろ》しゅうございます」
長[#「長」は底本では「男」と誤記]「なに宜《い》い事があるもんか、何んだ若《わけ》え身空アして……お店風だが、軽はずみな事をして親に歎《なげ》きを掛けちゃアいけねえよ、ポカリときめちまってガブ/\騒いだってお前《めえ》助かりゃアしねえぜ、え、おい、何《なん》で身を投げるんだえ」
五
男「御親切に有難うございます、私も身を投げる気はございませんが、迚《とて》も行立ちません、もう思案も分別も仕尽しまし
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