使ってしまっては往けないよ、今度のお金ばかりは一生懸命にお前が持って往くんだよ、よ、いゝかえ、此の娘の事だから私も店へは出し度《た》くもない、というは又悪い病でも受けて、床にでも着かれると可哀そうだから、斯《こ》う云う真実の娘ゆえ、私の塩梅《あんばい》の悪い時に手許《てもと》へ置いて、看病がさせ度いが、私の手許へ置くと思うと、お前に油断が出るといけないから、精出して稼いで、この娘を請出《うけだ》しに来るが宜いよ」
長「へえ私《わっち》も一生懸命になって稼ぎやすが、何うぞ一年か二年と思って下せえまし」
内儀「それでは二年経って身請に来ないと、お気の毒だが店へ出すよ、店へ出して悪い病でも出ると、お前この娘の罰《ばち》は当らないでも神様の罰が当るよ」
長「えゝそれは当ります、へえ有難うござえやす、貧乏|世帯《じょてえ》を張ってるもんですから、母親《おふくろ》と一緒に苦労して借金取のとけえ自分で言訳に往って詫ごとをしてくれるんです……へえ、其の代りお役には立ちやすめえから、一々小言を仰しゃって下せえやし、お久、お内儀さんも斯《こ》う仰しゃって下さるから何《なん》だが、店へ出てお客の機嫌|
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