頼むから、私も恟《びっく》りしたんだよ、本当に感心な事だって、当家《うち》にも斯《こ》うやって沢山|抱《かゝえ》の娘《こ》もあるが、年頃になって売られて来るものは大概|淫奔《いたずら》か何か悪い事を仕て来るものが多いんだのに、親の為に自分から駈込んで来て身を売るというような者が又とある訳のものじゃアないよ、本当にこんな親孝行者に苦労をさせて好《い》い気になってちゃア済まないよ、お前|幾歳《いくつ》におなりだ、四十の坂を越して、何うしたんだねまア、此の娘《こ》に不孝だよ」
長「えゝ……誠にどうも面目|次第《しでえ》もごぜえやせん、そんな事と知らねえもんですからね、年頃にもなってやすから、ひょッと又悪い者が附いて意地でも附けて遠くへ往っちまったかと思って、嬶《かゝ》アも驚きやして、方々探して歩いた訳なんで、へえ、お久堪忍してくれ、誠に面目次第もねえ、汝《てめえ》にまでおれは苦労をさせて」
と云いさして涙を浮《うか》め、声を曇らし、
長「実は己《おら》アお内儀さんの前《めえ》だが、汝《てめえ》に手を突いて謝るくれえ親の方が悪《わり》いんだが、汝の知ってる通り、此の暮は何うしても行立たね
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