口が利けないんだよ、それからまアどうしたんだ、何か心配事でも出来たのかというと、此の娘《こ》が親の恥を申しまして済みませんけれども、親父《おやじ》がまだ道楽が止みませんで、宅《うち》へも帰らず、賭博《いたずら》ばかり烈しく致して居りますが、あすが日、親父の腰へ縄でも附きますような事がありますと、私も見てはいられませんが、漸々《だん/\》借財が出来まして、何《ど》うしても此の暮が行立《ゆきた》たず、夫婦別れを為《し》ようか、世帯をしまおうかというのを、傍《そば》で聞いて居りますと、私も子供じゃアありませんから、聞き捨《ずて》にもなりませんので、誠に申し兼ねましたが、お役には立ちますまいけれど、私の身体を此方《こちら》さまへ、何年でも御奉公致しますから、親父をお呼びなすって私の身の代《しろ》を遣《や》って、借財の方《かた》が付いて、両親|交情好《なかよ》く暮しの附きますように為てやりとうございます、私がこういう処へつとめをしていますれば、よもや親父も私への義理で、道楽も止もうかと存じます、左様《そう》なれば親父への意見にもなりますから、どうぞ私の身体をお買いなすって下さいと、手を突いて私へ
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