》うでもないようだな」
七「へえ」
殿「何だかそれじゃア分らん、迎いをやっても来てくれんから恨んでいた。今日は宜く出て来たの」
七「へえ」
殿「続いて寒いから雪催しで有るの」
七「へえ」
殿「何だえ……御覧なさい、あの通りで……これ誰か七兵衞に浪々酌をしてやれ、膳を早く……まア/\これへ……えゝ此の御方《おかた》は下谷《したや》の金田様だ、存じているか、これから御贔屓になってお屋敷へ出んければ成らん」
金田「予て噂には聞いていたが未だしみ/″\会わん、下谷辺へ来るような事があったら、身が屋敷へも寄っておくれ」
七「へえ……彼方《あちら》へは往《い》きません、面倒だから何処《どっこ》も往きません」
殿「何かぐず/″\口の内で言っているな、浪々酌をしてやれ、もう一杯やれ」
七「へえ、お酒なら否《いや》とは云いません」
殿「其の方が久しく参らん内に私《わし》は役替《やくがえ》を仰せ付けられて、上《かみ》より黄金を二枚拝領した、何うだ床間《これ》にある、悦んでくれ」
七「へえ」
 と張合のない男で、お役替だと云えば御恐悦でございますとか、お目出度いぐらいの事は我々でも陳《の》べますが、七兵衞は
前へ 次へ
全13ページ中5ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング