\泣いたって仕様が無い、是れ七兵衞さんの褞袍《どてら》を貸しな、左様《そう》して何か帯でも三尺でも宜《え》いから貸しな、己はちょっと往って金を持って来るから、少し待ってろ、其の間にどうせ山越しで逃げなければ成らぬから、草鞋《わらじ》に紐を付けて、竹皮包《かわづゝみ》でも宜いから握飯《むすび》を拵《こしら》えて、松魚節《かつぶし》も入《い》るからな、食物《くいもの》の支度して梅干なども詰めて置け、己は一寸往って来るから」

        二十三

 永禪和尚も最《も》う是までと諦らめ、逐電致すより外《ほか》はないと心得ましたから、覗《のぞ》きの手拭で頬冠《ほゝかぶ》りを致し、七兵衞の褞袍《どてら》を着て三尺を締め、だく/″\した股引《ぱっち》を穿《は》きまして、どうだ気が利いてるだろうと裾《すそ》をからげて、大工町の裏道へ出まして、寺の門へこわ/″\這入って見ると、一向人がいる様子もござりませんから、勝手を知った庭伝いに卵塔場《らんとうば》へ廻って自分の居間へ参り、隠して有りました所の金包《かねづゝみ》を取出して、丁度百六拾金ばかり有りますのを、是を懐中へ入れて、そっと抜け出して来まし
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