こ》でございますから、お金で身体を縛ってしまいますから」
又「小増の身体を誰《たれ》か鎖で縛ると申すか」
婆「あれさ、小増さんに此方《こっち》で三十両出そうと云うと、彼方《あっち》で五十両出そうと云って張合ってするのだから、まことに仕様がございませんよ、流行妓てえなア辛いものでそれだから苦界《くがい》と云うので、察して気を長くお出でなさいよ」
又「成程是まで度々参っても振られる故、屋敷へ帰っても同役の者が…それ見やれ、迚《とて》も無駄じゃ、詰らぬから止せと云って大きに笑われ、迚も貴公などには買遂げられぬ駄目だと云われたが、金ずくで自由になる事なら誠に残念だから、幾ら遣《や》れば必らず私《わし》に靡《なび》くか」
婆「ねえ藤助どん、金ずくで自由になればと云うが……まアねえ其処《そこ》は義理ずくだからね、お金をまアねえ二拾両も遣って長襦袢でも買えと云えば、気の毒なと云って嬉しいと思って、又お前《ま》はんに前より情《じょう》の増す事が有るかも知れませんよ」
又「婆アの云う事は採《と》りあげられんが、藤助|確《しか》と請合うか」
藤「それは義理人情で、慥《たしか》にそれは是非小増さんがねえ」
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