又「然《しか》らば宜しい、今日は機嫌|好《よ》く帰って二十両持って来よう」
と笑って、其の日は屋敷へ帰ったが、勤番者で他《ほか》から金子を送る者もないから、大事の大小を質入《しちいれ》して二十五金を拵《こし》らえ、正直に奉書の紙へ包み、長い水引をかけ、折熨斗《おりのし》を附けて金二十両小増殿水司又市と書いて持って参りまして、直《すぐ》に小増に遣《つか》わし、これから酒肴《さけさかな》を取って機嫌好く飲んで居たが、その晩も又小増が来ないから顔色《がんしょく》を変えて怒《おこ》りました。毎《いつ》もの通り手を叩くこと夥《おびたゞ》しいが、怖がって誰《たれ》も参りません。
婆「一寸《ちょっと》藤助どん往っておくれよ」
藤「困りますね」
婆「今日は中根《なかね》はんが来て居るので、いゝえさ、どうも中根はんと深くなって居て、中根はんが上役だから下役の足軽みたいな人の所へは行かないのだよ」
藤「困りますな、怒《おこ》るとあの太い腕で撲《ぶた》れますが、今度は取捕《とっつか》まると何《ど》んな目に逢うか知れまいから驚きますねえ」
婆「私は怖いからお前一寸行ってお呉れよ」
藤「困りますね何うも……御
前へ
次へ
全303ページ中11ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング